語感モード

それは、失礼な言葉じゃないんだよ

2007.12.16 投稿者:藤川麻夕子

先日、忘年会でWeb制作会社の取締役の方とお会いしました。その会社は、とても大きな企業のとても大きなサイトばかりを手がけています。私たちフリーランスには到底できないことをいくつもなしとげる、業界のイベントにちょっと出ている方なら多分どなたでも知っている会社です。
彼からいろいろな講演や飲み会で聞く話にはいつもぐっとくるものがあります。でもそういえば、仕事に関することでこんなに長時間面と向かって話したことはなかったかもしれません。

彼は私に「こう言ったら失礼かもしれないけれど」と前置きをした上で、自分たちのような大規模案件を手がける会社も、私たちのような小規模案件を手がけるフリーランスも、持つべき意識は同じではないかという話をしました。このこと自体はすごく同意で、サイトの規模は関係なく、お客さんの満足度を上げるためにすべきことや、サイトを使うユーザーに対して行うべきことは同じだと思っています。

最初に配慮してくださったのは、私が「小規模案件を手がけている」という立場だとして話をしたことだと思うのですが、それは、まったく失礼ではないんです。

私たちと同じフリーランスの中には、「今は小規模な案件しかできないけれど、いつかもっとビッグになって大規模案件を手がけられるようになりたい」と思っている人もいるかもしれないし、「小規模な案件しかできない自分が至らない、情けない」と思っている人もいるかもしれないけれど、私自身はそれを思ったことは一度もありません。今の自分の立ち位置が人に必要とされていると思っているし、大規模な案件を手がける会社に、小規模な案件を手がけることはできないと思っているからです。

小規模なサイトを作りたいと願う人は、多分大規模サイトの何十倍...いや何百倍もいます。私は「小規模サイトを手がける人」でありたいとずっと思っています。といっても、大企業のサイトもそれなりにやってきたし、今もやっているけれど、それがあるからこそ、小さなサイトを作ることは大きなサイトを作るのとは違うスキルや知識や「心」が必要だと感じます。もちろん、小規模のサイトならスキルがいらないとか、スキルがないから小規模なものしか作れないとか、そんなことを考えている人はもう論外。小規模だろうが大規模だろうが、必要な技術や意識の高さのレベルは変わらないと思ってます。

Web制作者には棲み分けがあると私は思っています。大規模サイトを作る業者と小規模サイトを作る業者は、「業界が違う」というくらい異なるステージにいると思っています。SNSができるまで、ステージが違う私たちが出会うことはまずなかったのですが、それが2004年から急接近して同業として一緒に行動することが増えてから、この「違い」を痛感するようになりました。

でも、最終的な目的は同じなんですね。
お客さんが伝えたいことを、見る人に伝わるようにする。
目指すのはこれだけなんだと思う。私たちは、伝えたいことをWebサイトという形で表現するのが仕事。その表現手段とか過程が違うだけ。だから、ステージが違う人たちとたくさん接することができたこの3年間はすごく勉強になったし、私自身の立ち位置をはっきりさせるきっかけになりました。

「失礼かもしれないけれど」と前置きしてくださった紳士的な対応にほんとに感謝しつつ、私の立場を分かって、それでも同じ目線で話をしてくれたことがとてもうれしかったです。動くステージは違うけど、同業として共有すべきところはたくさんあるから、そういうところをストレートに話し合える場は、もっともっとほしいと思います。

共通点が非常に少ない中で(笑)、#fc0がやまもといずみふじかわまゆこで構成されているという最大の理由は、この意識がぴったり一致しているからなのです。この話については、いつかしっかり書きます。