私がやってきたのは「翻訳」だけ。
2015.12.14 投稿者:藤川麻夕子
※この記事は、「Webディレクション Advent Calendar 2015」の14日目の記事です。(基本的に同業者向けです)
今回はむかし話から入ります。
私のディレクターデビュー
私が2000年にWeb制作専門のフリーランスとして独立したころから、デザインのみとかコーディングのみという仕事はあまりなく、企画から入ってそこからすべて一人で作っていました。毎日徹夜続きで、このままだと今後私がいろんな意味で持たないのは目に見えていました。だから、何年かかけてチームで制作ができる体制を作って、私はディレクター的な立ち位置にになっていかなければ…と思っていました。
独立して3年後、30歳くらいのときに、私は意識的に「Webディレクション」をしようとしてボランティアのWeb制作チームを複数つくりました。当時ネット上で知り合ったWebデザイナーや趣味でサイトを作っていた人たちに声をかけて作ったチームで、最大で20人ちょっと、最小でも10人くらいの規模でした。
それぞれのチームでWeb制作初心者向けの情報サイトや、NPO団体のサイトなどいくつかのサイトをボランティアで手がけましたが、今思うとディレクター駆け出しにしてはちょっとハードルを上げすぎたと思います^^;
でも、このときの経験が今現在もあちこちで生きていると思います。
やってきたことはひとつだけだった
ボランティアチームの中でディレクターという立ち位置に意識的に徹するようにしてから感じたのは、自分がずっと「翻訳」をし続けているということでした。
最終的な納品物はひとつで、関わる人は複数。
それぞれの立場も思惑も異なると、しゃべっている「言語」が違います。最終的に作り上げるものは同じものなのに、「言語」が違うために「解釈」が変わることでいろいろなズレが生じます。
私がやっていたのは、そのズレをできるだけなくすことだったように思います。
お客様、プロデューサー、デザイナー、コーダー…といったいろんな関係者がいて、それぞれがしゃべっていることを理解し、それぞれの言葉で再解釈して伝えることしかやっていなかった気がします。
というか、業務としてディレクションをやるようになってからもそれしかやってない感じがします。
「翻訳」をするときに気をつけていること
いろいろありますが、大きくわけると3つくらいかな。
- やり方を決めない
- 上下関係を意識しない
- 自分がわからないことを認める
(1) やり方を決めない
これは一度、ブログ記事として書いたことがあります。
たとえば、スケジュールをガントチャートで出すかメール本文で書くか、ワイヤーフレーム(サイト構成案、と私たちは呼びます)を出すか出さないか、連絡手段はメールか電話か、というようなところから「決めない」のです。よほどのことがない限り、関わる相手(お客様やパートナー)が一番自分勝手に動けるやり方にこちらが合わせたいと思っています。
ワイヤーを作るとそれがデザインだと勘違いするお客様も多いですし、ガントチャートを作ってもそれを華麗にスルーするパートナーさんもいます。それは相手が悪いのではなく、こちらが合わせられていないだけ。相手を理解できていないんだと思っています。
初めて接する方はもちろん最初はよくわからないので、とりあえずなんらかの方法でこちらが接して、理解を深める中でやり方を変えていきながら、合うやり方を探します。
(2) 上下関係を意識しない
お客様やパートナーとは上下関係を作らないことを意識しています。上下関係を作ってしまうと本気で接することができないし、理解もできなくなってしまうからです。
上下関係をつくらないというのはたとえばどういうことかというと、
- お客様の機嫌をとる目的で嘘とかオーバーなことを言う、といった態度を取らない
- パートナーさんに対してこちらの都合を主観的に押し付けない
とか、そういうことです。
会社としてこれを無意識にやらないように努力をしてる感じです。
これってね、結局「相手をコントロールしている」意識があるからこうなるんだと思うんです。人はコントロールしても動かない。こちらが広く場所をつくって、自発的に動いてもらったほうがいいと私は思っています。(もちろんこれは相当大変ですけどね)
(3) 自分がわからないことを認める
「翻訳者」はいろんなことや人を理解してこそ動くことができるから、わからないときにわからないと言うことがすごく大事だと思っています。
もちろん、努力はします。たとえば、お客様やパートナーさんが指定してきたツールの使い方がわからないときにとりあえずがんばって操作を調べたりとか、言われた言葉がわからないときにググったりとか。なんで努力するかっていうと「理解しようとしている」ことを伝えるためです。
わからないのに知ったかぶりをするのは、ほんとにまずい。
私たちが接しているのは、案件じゃなく人だから。
Web制作において、お客様より制作者のほうが知識があることを利用したコントロールは私の価値基準的には最低です。自分が単に技術的においつかないからできないことを、相手に知識がないことをいいことによくわからない正当?な理由をつけて断る、というようなことはしたくないです。
相手が望むことが自分にできるかどうかは、とりあえずちゃんと考えたいです。
今自分ができなくても、誰かに頼めば、私が努力すれば、できるなら。
「翻訳者」のレベル上げ
私自身は「翻訳者」としてまだまだなので、努力をしていなかければなりません。
いろんなツールとか技術とか手法とかの知識は持っておきたいと思っています。どこから調べれれば深い理解に繋がるのかという「入口」は記憶するようにしています。Webディレクションに関する手法だの考え方だのって、なんかちょっと宗教に近い動きをするときがありますけど、私はどんどんやって!と思います。それが私にとって「選択肢のひとつ」になるから。
今やっているような「状況や人を理解して伝える仕事」は、もともと教師を目指していた私にとって少し近い立ち位置なのかなと思っています。まあ板挟みになることも多いのできついときもありますけど、なんだかんだいって多分向いているんだろうなと思います。
以上、久々に長々と書いてみました。
私がやっていることを一方的に書いただけなので、Webディレクターのみなさんに伝わるようないいことはあまりないと思いますが、私なりに私の置かれた環境の中でがんばってますよ、ということで。
それぞれの立場でがんばってまいりましょう!